私は時々みかんの栽培管理において、優先すべき作業は何であろう?と考える事がよくあります。
施肥?薬剤防除?除草管理?水やり?摘果作業?など年間を通しての管理作業を考える事がたまにあります。
年間作業を考えてさらに突き詰めてみると、私の答えは剪定作業の重要性に辿り着きます。
春先にはまだ昨年からの収穫作業の疲労や、中晩柑類の収穫作業がまだ残っていたり、他の作業でも施肥や除草作業に薬剤防除などたくさん仕事があります。
そんな作業の合間に剪定作業をしなければならず、ついつい面倒くさくなって疎かになりがちですが、やはり剪定作業をするしないではその後の管理作業に影響します。
今回は、剪定作業の必要性と効果について解説してみましょう。
剪定作業とは?
果樹栽培の剪定作業とは、主に樹勢維持や結果母枝の更新、枯れ枝除去や作業性の向上などを目的として、春先から初夏にかけて行われます。
剪定作業のメリット
樹勢の維持回復
みかんなどの果樹は、樹冠が大きくなればなるほど沢山の果実を実らせ、その分の栄養分を必要とします。
必要以上に果実を実らせると、樹体は疲弊し安定生産が出来なくなります。
そうならない為にも剪定作業で不必要な枝や枯れ枝などを剪除し、栄養分の調整やホルモンバランスを整え健全な樹体を維持します。
農薬散布が効果的になる。
剪定作業では枯れ枝の除去はもとより、薬剤のかかりにくい下垂枝や内向枝及び陰葉などを剪除する事により、薬剤がかかりやすくなるので薬剤散布量が節約できます。特にカイガラ虫類などは剪定する事により寄生密度が減少し、おまけに葉裏まで薬剤が届くようになり防除効果の向上と経理削減の相乗効果が得られます。
作業性が向上する
混み合った枝や、作業上邪魔な枝などを剪除し整理する事により作業空間が確保できます。
それによって、収穫、薬剤散布、施肥、除草管理と全ての作業性が向上します。
摘果作業の軽減
みかん栽培では第二次生理落果が落ち着くと、樹勢の弱い樹から荒摘果が始まります。
最初の摘果作業は、高品質が見込めない裾成り果や懐果を重点的に摘果します。
内向枝や重なり枝など、不要な枝数が多ければ多いほど摘果作業が多くなります。
裾成り果や懐果ができやすい下垂枝や内向枝及び陰葉などを剪定作業で剪除しておけば、摘果作業の負担が軽減されます。
施肥量の軽減
剪定作業をするしないでは、枝数や葉数が変わってきます。
枝数や葉数が多いと、養うべき栄養分が沢山必要となってくる為、それを補える肥料が必要となってきます。
剪定作業をする事により、枝数や葉数を調整でき適切な施肥量を維持できますし。
特に切り上げ剪定などは、栄養分の引き上げや植物ホルモンの分泌がスムーズになる分、減肥が可能となります。
隔年結果の是正
剪定作業で、健全な結果母枝を活かす剪定技術を身に着ければ連年着果も可能です。
高度な技術が必要とされますが、花と芽のバランスを適切に整えれば毎年美味しい果実が収穫する事ができます。
剪定作業のデメリット
技術力が必要!
植物の養分吸収の流れや生理作用など、ある程度の知識が必要です。
植物の生理作用を理解しないと、ホルモンバランスを崩して樹形が暴れ出したり、逆に樹勢低下や隔年結果を助長します。
だからといって何もしないと、技術や品質及び作業性の向上などは見込めません。
果樹全体の剪除率は20%以内に留めておくのがポイントです。
手や肩に負担がかかる。
剪定作業は楽そうに見えて、結構手首や肩に負担がかかる作業です。
鋸やチェーンソーなどが必要になると、さらに腰に負担がかかってきますし、電動剪定鋏などは取り扱いに注意しなければ非常に危険な鋏ですので、無理なく1日でこなせる仕事量を計画し、適度な休憩を挟みながら作業して下さい。
剪除した枝の処理
小さな剪定枝はそのままにしても構いませんが、大きな剪定枝は足下が邪魔になったり薬剤防除の際ホースが絡まったりしますので、邪魔にならない程度の大きさに解体するか園外に持ち出して処分しなければなりません。
私は剪定枝も有機物の補給と考え、邪魔にならない大きさまで解体しそのまま放置しています。
まとめ
みかん栽培やその他の果樹栽培に於いても剪定作業は非常に重要な作業です。
剪定作業をする事により、樹勢の維持回復や結果母枝の更新など収量維持には非常に重要な作業です。
栽培管理の面におきましても、剪定作業をする事によって薬剤散布が効果的になり、減農薬や減肥が見込めますし、作業スペースが確保できて作業効率がアップします。
しかし剪定作業はメリットばかりではありません、剪定作業にはある程度の知識と技術が必要です。
ただ単に枝を切り落とすだけでは逆に樹勢を低下させ、さらにホルモンバランスが崩れて花や果実が結実しなくなります。
切るべき枝を切り、その上で切り過ぎず切らなさ過ぎずの見極めが必要となります。失敗を恐れずに糧として技術向上に努めてほしいです。
体力的には、肩や手首に負担がかかる作業です。1日の作業量を計画し、疲労を感じたならば中断して休憩するか、その日は作業を切り上げましょう。
剪除した剪定枝の処分も必要となります。後の管理作業の妨げにならないような大きさに解体しましょう。
最後に。
私の果樹栽培では、管理作業を一年間通して見てみると、最も時間をかけているのが剪定作業です。
常に腰には剪定鋏と鋸を携帯し、切り残した枝や作業に支障をきたす枝などを常に切り落としています。
ただ闇雲に剪定するのではなく、枯れ枝を全て取り除き、出来るだけ節部に沿って切り残しができないように心がけています。
そして、剪除した剪定枝とて大切な有機物ですので、そのまま園内に放置し畑の肥やしとします。しかし大きな剪定枝をそのまま放置すれば邪魔になり、その後の農作業に影響してきますので、後の作業性を考えて剪除した枝を出来るだけ小さく解体し、園内に放置するか焼却処分し、その際できた灰を園内に撒いて肥料成分を補給します。
剪定法に関しても、切り上げ剪定などをすれば、根から芽や葉への吸収効率と成長ホルモンがアップするので、施肥効果や病害虫への抵抗性もアップするので減肥や減農薬が見込めます。
剪定作業は非常に奥が深く、すぐに結果が出るとは限りません。だからといって何もしなくては技術の向上も見込めません。
私の経験上隔年結果が強い今年は表年にあたる樹は、少し早い時期から取りかかり、多少剪定で切り過ぎても花は咲き結実もしやすく同時に新芽も伸びます。
逆に裏年ならばどうせ結実が少ないのだからと、剪定時期を遅らせたり、大きな枝を少し切り落とすくらいで表年の樹の剪定に集中します。
剪定作業に夢中になるとつい切りすぎてしまうので、樹全体の20 %の剪定を心がけましょう。
今回は安定生産や品質管理だけではなく、生産効率の改善やコスト削減などをも含めた、「みかん栽培における剪定の重要性。」を紹介いたしました。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。